2013年6月13日木曜日

簡略化・翻訳で『二項定理』をシンプルに

"学習力"の要素として"簡略化する"ことと"翻訳する"ことを挙げました。
要は「複雑なものを複雑なままどうにかしようなんて思うな」ということです。
いかにして自分の頭のなかに収めるか、そこを工夫しなければ学習したことになりませんからね。

というわけで、もうちょっと"簡略化"と"翻訳"の例を挙げてみます。



わかりにくい公式をきちんと解釈する

数学の教科書の中には結構な個数の囲み記事があります。
いわゆる"まとめ"とか"公式"とか"定理"とかいうやつです。

"まとめ"や"公式"と言えば「そのまま数字を当てはめれば答えが出る便利なもの」と思うでしょうが、中には使い方が難しく、そう簡単には使いこなせないものもあります。
例えば、生徒にとって難しいものというと、『二項定理』もその1つでしょう。

『二項定理』は次のような形でまとめられています。
$\displaystyle (a+b)^n=_n\!C_0\,a^n+_n\!C_1\,a^{n-1}\,b+_n\!C_2\,a^{n-2}\,b^2+\cdots\\ \hspace{2.5cm}\cdots+_n\!C_r\,a^{n-r}\,b^r+\cdots\cdots +_n\!C_{n-1}\,a\,b^{b-1}+_n\!C_n\,b^2$
数学嫌いの人が見たら、一発で拒否反応が出そうな長い式でしょう?(笑)
これ、なにに使うかといいますと、$(a+b)^5$のような何乗もの展開をする場合に、「それぞれの項の係数がどうなるか」を表したものです。
この式の中で一番大切な部分は $_n\!C_r\,a^{n-r}\,b^r$ のところなんですが、ぱっと見ではそんなことはわかりません。
教科書では"囲みの下の部分(欄外)"に 「$_n\!C_r\,a^{n-r}\,b^r$を一般項という」 なんて書いてますが、その直前に囲みがあったら、枠の外なんてまずもって重要視しないですよね。

で、これを利用する問題として、例えば、「$(a+b)^5のa^2b^3の項$の係数を求めなさい」と出題されるわけです。

あの式全体を丸暗記するのではなく、次のように理解します。

あのだらだらした公式を、重要な1項だけに着目する形に簡略化しました。
ついで、係数の問題を「いくつかの$( )$から、$a$と$b$を何個かずつ選んで持って来る"持ってき方"」というように翻訳しなおしました。
この方が式の根拠がわかるし、実際によっぽど使いやすいからです。
 ※実際には「公式化する一歩手前の部分」を整理しました
  数学では、"まとめ"そのものよりも、"そこに行き着く過程"の方が有用な場合が多々あります

教科書の説明って難しいですよね・・・

とはいえ、せっかくまとめても、使ってみないとわからないでしょう。
実際に問題を。
(1) $(2x-3)^5$の$x^3$の項の係数を求めなさい。
(2) $(x^2+4)^6$の$x^8$の項の係数を求めなさい。
(3) $(x+2y-3)^5$の$x^2y$の項の係数を求めなさい。
(4) $(x^2-3x+1)^{10}$の$x^3$の項の係数を求めなさい。 [東京工科大]

まずは(1)
この問題を教科書や参考書の解答に合わせて書いてみると次にようになります。
$(2x-3)^5$の展開式の一般項は $_5C_r\, (2x)^{5-r} (-3)^r= _5C_r\, 2^{5-r}(-3)^r\ \cdot x^{5-r} $
$x^3$となるのは$r=2$のときなので、その係数は $_5C_2\,2^3\cdot(-3)^2=720x^3$ である

この解答を見て「あぁうん、なるほどね」と思えるか、ということですね。
あ、この解答、式は違いますが、形式は本当に数研出版の教科書の例題の解答をパクってます(笑)
二項定理の説明のすぐ後にあるんですよ。ちょっと難しめの【例題】として。

というわけで、これを私が翻訳するとこんな感じになります。
$(2x-3)^5=(2x-3)(2x-3)(2x-3)(2x-3)(2x-3)$
ここから$x^3$を作り出すためには、$x$を3つかければよい。
つまり、5つの$( )$から、$2x$を3つ と $-3$を残りの2つ 持ってくる
 持ってくるもってき方=並べ方は$\displaystyle\frac{5!}{3!2!}$通り
よって $\displaystyle\frac{5!}{3!2!}\times (2x)^3\times(-3)^2=10×8x^3\times 9=720x^3$
いくらか読みやすくなってるのではないでしょうか。
つまり、べつに$r$なんて大層なものをつかわなくたって、「$(2x)$と$(-3)$をいくつずつ持ってきてるか」だけわかればいいわけです。
$n$とか$r$とか、文字が多くなればなるほど分かりづらくなりますからね。

記述的には教科書的なカチカチした方が誤謬がないという意味で「正しい」のですが、問題はそれが理解に繋がているかどうかということです。
「正しい」書き方だから「わかる」かといえば、そうではないと思うんですよね。
そして、分かってもいないものをそのまま呑み込むことは、学習にはなっていないと思うのです。

残りの問題も解いていまします

続いて(2)を。
$( )$の中にあるのが$x$か$x^2$かの違いはあっても、考え方は全く同じ。
$(x^2+4)^6=(x^2+4)(x^2+4)(x^2+4)(x^2+4)(x^2+4)(x^2+4)$
ここから$x^8$を作り出すためには、$x^2$を4つかければよい。
つまり、6つの$( )$から、 $x^2$を4つ と $(+4)$ を残りの2つ持ってくる
 並べ方は$\displaystyle\frac{6!}{4!2!}$通り
よって $\displaystyle\frac{6!}{4!2!}\times (x^2)^4\times(+4)^2 =15×x^6\times 16=240x^8$

今度は(3)
$( )$の中に3項入ってますが、「$( )$から項を選び取ってくる」という発想は2項でも3項でも同じです。
$(x+2y-3)^5=(x+2y-3)(x+2y-3)(x+2y-3)(x+2y-3)(x+2y-3)$
ここから$x^2y$を作り出すためには、$x$を2つ, $2y$を1つ, 残りの2つを$-3$にすればよい。
 並べ方は$\displaystyle\frac{5!}{2!1!2!}$通り
よって $\displaystyle\frac{5!}{2!1!2!}\times x^2\times(2y)^1\times(-3)^2=30×x^2\times 2y \times 9=540x^2y$

最後に(4)
(3)と同じく$( )$の中に3項入ってますが違うのは$x^2$の項と$x$の項が入っていることです。
でも「$( )$から項を選び取ってくる」という発想はこれも同じです。
$(x^2-3x+1)^{10}=\underbrace{(x^2-3x+1)(x^2-3x+1)\cdots\cdots(x^2-3x+1)}_{10コ}$
ここから$x^3$を作り出すためには、項の組み合わせ方が2パターン考えられます。
つまり、
 1.$x^2$を1つと $-3x$を1つ組み合わせて$x^3$を作る場合 →残りの8つが$-1$
 2.$x^2$を使わず, $-3x$を3組み合わせて$x^3$を作る場合 →残りの7つが$-1$
2パターンあるので、それぞれでどんな係数になるかを調べればよいでしょう。

 1.の場合 $\displaystyle\frac{10!}{1!1!8!}\times (x^2)^1\times (-3x)^1\times (+1)^8=90×x^2\times (-3x) \times 1=-270x^3$

 2.の場合 $\displaystyle\frac{10!}{0!3!7!}\times (x^2)^0\times (-3x)^3\times (+1)^7=120×(-27x^3) \times 1=-3240x^3$

よって、$-270x^3-3240x^3=-3510x^3$

この4問、チャート式などの参考書を見てみるとわかりますが、(1)(2)と(3)と(4)で、ページをまたいで解説しています。
つまり、丸暗記型の勉強しかしていないと、これらの問題は"別物"として扱われてしまうわけです。
そうではなく、「いかにして基本的な理解をいろいろな形に繋げていくか」こそが、最も大切なことだと思います。


なんか、しばらく前にも似たようなテーマで書いてました。
 →『だから、式だけ覚えても意味が無いんだってば
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