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ちょっとキツ目のAO入試に挑戦した高3生。
無事に合格の知らせが来たので、少しホッとしたところです。(11月15日現在)
AOの難しさについては、一度指導中に記事にしてはいるのですが、では実際に何をどう指導したかというのを書いてませんでしたので、今回はそれを整理してみます。
だって、ほら、、、自信満々に書いて、それで不合格だったら、、、ねぇ?(苦笑)
まずは志望理由の掘り起こし
AOや推薦入試でどうしても避けられないのが『志望理由』です。問われる形式は出願書類の一項目だったり作文だったり面接だったりといろいろですが、でもおそらく、これを聞かれずに済むことはないでしょう。
だから、まず、ここをきちんと掘り起こす必要があります。
なぜこの学部に行きたいと思うのか。
そこに入って、一体何を勉強したいのか。
その分野になぜこだわりを持っているのか。
どうして山ほどある選択肢の中で、この学校でなければならないのか。
場合によっては、なぜそもそも大学に行こうと思うのか(実際に今回の提出書類にもありました)、まで。
それらに対するこだわりって、おそらく受験生はほとんど持ち合わせていないと思うんですね。
たいていの生徒は「進学するのはアタリマエ」だと思っているし「入れるところ」を探していますから。
でも、AOや推薦で行こうとする以上、「そこを選ぶ理由」をキッチリと明確にしておかなければなりません。
というわけで、「大学では何をしたいの?」「なんでそれにこだわるの?」「きっかけはなんかあった?」「そのイメージは実際のものとは随分ズレていると思うけど、こういうのは調べてみた?」とまぁ、面接官かのようにして質問攻めするわけです。
多くの生徒はそこで初めて「そんなに真剣には考えてなかった」と気付くわけですね。
この気付きがあって、初めてスタートラインに立つように思います。
あれこれの問答を繰り返し、志望理由などを提出できるレベルに仕上げるのに、なんだかんだで半月くらいかかったんじゃないかな?
その間に原稿を何往復もしたんですが「この文章なら、受ける気のない俺でも30分あれば書けるわ。それはつまりこだわりも熱意もないってことでしょ?」と。
文字にしたら400字程度ですけど、本人の意識の底を掘り返して書いた中身のある400字と、受ける気がさらさらない私でもすぐに書けるようなすっかすかな400字では、印象は全く違うと思います。
今できていることを見せること
今回、提出課題の中で『日常の中で問題意識を持っていることについて書け』という"作文?"が課されました。これを見て、本人は「作文?なんでもいいのかな?」と考えたようですが、私の捉え方は「自分でネタを調べた上でのレポートでしょ。」
つまり、課題研究レポートに近い。
で、まずはいくつかの題材を挙げて何について書こうかというところから。
テーマを並べてみて、そこからレポートとして書けそうなものを選ぶわけですが、これがまた箇条書きにして書いてみないとわからないもので。
結局「自分にしか書けない題材で行こう」ということにしたのですが、この素材を決める作業で1週間。
そこから本人がいろいろ調べて書いてみたのを読んだのですが、「とりあえず調べたことと考えたことを並べました」で検証もなければ主張もなければという感じで、「結局何が言いたいのか」が読んでも伝わってこない。
筋道のある"論"になっていないわけです。
「○○に比べ多い」と書きたいなら実際に数値の比較が必要だとか、「比較的少ないといえる」と言いたいのならどういう観点でなにを計算をした上での結論かを書かないといけないとか。
「これを結論として言いたいのなら、ココで言っているデータはどこに繋がるの?」とか。
目指すは法学部なんですが、生粋の文系生徒ということもあって理論やデータに甘い!
ほぼすべてが印象論になっていて、メモ書きや感想文の範疇だったんですね。
なので、「これを言いたいならこのデータが必要」だとか「この流れからの結論がこれではオカシイだろ」だとか、そういうのを4~5往復ほど。
3往復目あたりの「これじゃ全然ダメでしょ」の辺りでも学校の先生には「いいんじゃない?」とか言われてたようですが、どうしてどうして。
このとき考えていたのは、「AOの出願書類で準備期間もそれなりに貰ってるのに、"とりあえず"で出していいわけないだろ!」ってことなんです。
10人の募集枠でも合格が3名だったりするAO入試です。
しかも目指すところは実力から考えればちょっと格上。
前回も書いたように、オーディションとして考えてますから、読んだ人が少しでも「なるほど、この生徒はここまで出来るんだ」と思ってくれなきゃダメじゃないですか。
中堅以上の法学部のレポートですから、法律の条文や統計データをきちんと読むという作業は入学してからどうやったって要求されるわけです。
なら、「データの読み取りや根拠に基づいた推論くらいは出来てますよ」というのを見せなけりゃならないんじゃないかと。
ありがたいことに、生徒さんの周りの方たちがいろいろな情報やデータを提供してくれたため、裏を取りたかったところはキッチリと取ることができ、完成したレポートも「なるほど、ちゃんと調べたね」と言えるものになりました。
期間中に往復させたメールを今改めて見てみても、最初の文章と最終版では全然違ったものになっています。
テーマが固まった後、レポートを書き始めて約2週間かかりましたが、まぁ時間的には妥当なところかなと。
見せるにも"見せ方"があるということ
提出書類による1次審査が無事に通り、2次審査に課せられたのは作文に近い感じの小論文とディスカッションでした。小論文はその場で何とかしてもらうとして、問題はディスカッションの方。
テーマが決められていて、それについて調べて自分の考えをまとめ、資料を持ち込み、それについてお互いに討議しなさいというお題。
調べることとそこから結論を出すことは2度目なのでさすがに慣れたものですが、今度は資料作成がありますからプレゼンテーションの技術が入ってきます。
つまり、「自分の言いたいことを、どのデータを使ってどう見せるか」ですね。
私自身は『情報C』の授業の中でプレゼンテーションの指導もしていたんですが、、、まぁ、先生によっては触れないですよねぇ。。。
というわけで、今度はエクセルデータのグラフへ加工や、相手の視線を意識したデータの強調の仕方などを短い時間でさら~っと。
サイト構築とかパンフレット作成でもそうなんですが、「配色をどうするか」とか「目立たせたい数字はどれか」とか「限られた紙面に何を盛り込むか」とか、人に見てもらうためにもある程度の配慮や技術が必要なんです。
そんなことをアレコレ入れ知恵してました。
AOで受験しようと考えている人へ
こんな感じで、9月末から準備をし始め、なんだかんだで提出までに1ヶ月近くかかり、さらに2次審査を経て、ようやっと合格の知らせが届いたわけですが、この経験からわかることを幾つか整理しますと、、、
・AO一本で受けようとするな。
学校によってはかなりキツイ。落ちたときのことも考えないといけない。
・キツ目のAOではかなりの時間が取られる。
受験勉強は場合によっては1ヶ月間停まると思っていい。
・選考内容を事前確認しておくこと。
小論文は学校でも添削指導してもらえるだろうが、課題研究となるとかなり大変。
要件によってはプレゼンなど「未経験のもの」が要求される場合がある。
という感じでしょうか。本人には最初からそう言ってはいたんですが、さすがに中堅以上のAOはそんな簡単なもんじゃないです。
たまたま私自身に高校での情報科の指導経験や中学での総合学習・課題研究発表の指導経験、そして私立高校での面接による入試選考の経験があったからあれやこれやと細々と見てあげることができたわけですが、そうじゃなかったら、さすがにきちんと指導することは難しかったでしょう。
それに加え、やはりきちんと準備するには時間的な問題がかなり大きい。
当人も「いつまでかかるのー!」と何度も言っていましたから。。。
夏休み明けの時期に1ヶ月の時間をAOに注ぐというのは、結果が出たから良かったものの、もしもと考えればなかなかヘビーです。
AOでの受験の予定がある場合は、早い段階で要項をしっかりと確認し、課題に対しても、もしもの場合のその後の受験勉強に対しても時間的余裕を持って望めるような準備をしたほうが良さそうです。
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