"中堅進学校"と呼ばれる高校での進路指導の状況と、それによって陥りそうな失敗については前回書いたとおりです。
実際にそういう学校の生徒を指導している人からすれば「何をいまさら」なことしか書いていないんですが。
でも、通っている生徒自身やもしくは内部事情を知らない中学生、そしてその家族からしたら見えないものばかり、らしいですからねぇ。
まぁどこでもそうかといえば、そういうわけでもないのだろうけど、少なくとも、自分が想定しているものよりいい話は、聞いた試しがない。。。
で、ようやく本題の「じゃぁ高校生に対して、塾・予備校の果たす役割は」ということについて。
「一度は予備校で勉強してみたらいいよ」
もう10年以上前、新卒から4年目の事になりますが、"進学校化"を目指す私立高校で進学コース(今では特進コース?)の学級担任をしたことがあります。当時、1学年の進学クラス担当者では唯一進路指導部にいた事もあって、夏休みに大学の学校案内を取り寄せさせたり、ホームルームで職業調べや学部・学科調べをさせたりと、まぁそれなりの進路指導をしていたつもり、です。
そんな中、3者面談とかもあって進路希望を聞くことになるのですが、一般入試を前提に考えている生徒には「予備校の夏期・冬期の講習を一度でいいから受けてこい」と伝えていました。
おそらく、その学校から予備校の授業にいきなり参加したとしても、ほとんどの生徒の場合は授業の内容にはほとんどついて行けないでしょう。
私自身がそんなにレベルの低い授業をしていたとは思いませんが、でも、"進学校になりたい学校"(=生徒の実力がそこまでではない学校)でそんなに本格的に大学入試を意識した内容の授業なんて出来ないですからね。
だから、学力の不足は最初から織り込み済みで、「周りの生徒がどんな感じか見るつもりで一度受けといで」と。
つまり、「○○大を受けたい」というのなら、2年後に勝負する相手を見てこいってことなんです。
目隠しを外すことがまずは先
おそらく、"中堅進学校"の多くの生徒は、他の"進学校"の生徒がどんなペースでどのレベルの問題を解いているか、現時点でどの程度の理解力を持っていてどこが目標になるのか、そういったものをほとんど把握できていません。学校内の基準に従って、とりあえず学校の授業が理解できていること、定期試験でそこそこの点が取れることが最優先になります。
例えば、数学なら傍用問題集の問題が解けたら終了だし、英語なら学校の本文中の英単語が書けて、課題で課された文を丸暗記してればクリアしたつもりになっている。
国語にしても、教科書に載っている、授業で説明された文を読んで「あぁなるほど」と思っているだけで、自分では問題を解いていないでしょう?
確率と数列とが組み合わさった問題が存在することすら知らないし、初見の英語長文を手際よく読んでいく術も知らないし、「論説文は何書いてるのかわからんけど、センターなら選択肢だしなんとなくで解けるものだ」と思っている。
大学入試問題が学校の定期試験とは全く違うものを要求しているってことすら知らない場合のほうが多いでしょう。
だから、3年生の半ば、もしくはセンター試験でヒドイ点を取るまで、「自分がそのレベルにはない」ということに気付かないんです。
ではどうするか。
「のんびりたらたらやっている、今のその環境の方が間違ってんの!」とどこかの時点で気付かせないといけません。
だから、「予備校に行って来い」というのです。
『餅は餅屋』といいますし
予備校に行くメリットははっきりしています。大学受験で求められる学力がどの程度のものかを各教科ごとに明確にされて、それをきちんと整理して与えてもらえることです。
以前ある高校で、模試の作問もしていたような元予備校講師の数学教員と一緒に仕事をしていましたが、コレはもうどうやったって普通の高校の教員では敵わないという印象を受けました。
別に、自分の授業が上手い下手の話ではなく、おそらく、普段から触れている入試問題の絶対数が比較にならないほど違っていて、どの分野でどういう出題がされているかということを彼らは熟知している。
「あーこの問題って、何年の○○大の問3に似てるよねー」→「いや、そんなのしらねーわ。なんで年度まで覚えてんのよ?(汗」っていう会話が頻繁にありましたし(笑)
だから、同じ分野を教えていても、アプローチの仕方が全く違っているんですね。
自分の授業がその人より下手だとは一度も思ったことはないんですけどね(笑)
でも、私の授業は学校での中位層を上位につなげていく授業、彼の授業は学校での上位層を入試で戦えるレベルにまで持って行こうとする授業。
守備範囲が全く違うんだなぁと当時思ったものです。
なので、本格的に入試問題について知ろうと思うのなら予備校の授業を受けてみる、もしくはそれに近い感覚で編集された参考書をきっちりやり込むというのが一番。
でも、うまく消化できるかどうかが一番の問題
ただし、"中堅進学校"で中位程度の生徒の場合、予備校に行ったとしても、また、そのレベルの参考書を使おうとしても、効果が見られない可能性もあります。なぜなら、予備校の授業の多くは学校の授業の進度を考えてはくれないから。
学校は学校で授業が進み、予備校は予備校で授業を取って、となったとき、それを両方ともきちんと理解して身につけるだけの消化力は"中堅進学校"の生徒に期待できるでしょうか?
高校受験指導の塾の多くは、塾の指導を学校の進度に合わせ、学校の定期試験に合わせた形で授業を組みます。
おそらく"中堅進学校"に進学した子の多くは、そういった学校べったりの授業しか受けてきていません。
でも、それでも消化不良を起こしたから最上位には食い込めず、"中堅"に甘んじているわけです。
本当にデキる子であれば、中学校の授業進度なんて遅く・簡単に感じていますからね。
ハッキリ言えば、"中堅進学校"の生徒の多くは、たとえ中学では上位2~3割くらいの位置に居たとしても「その程度」なんです。
だから、「予備校に行って勉強する」と決めたのであれば、カリキュラムが学校と予備校とで複線化することを前提に、かなりの時間をかけてでもその両方をバランス良く消化していく必要があります。
じゃぁ参考書で勉強してみる?
また、参考書や問題集をきちんと選び、それをやり込むにも、相応の学力が要求されます。入試に向けての学力を伸ばすための道具として参考書を使うのに、基礎学力がなければそれすら使いこなせないんです。
おそらく、本格的に進学を意識している進学校の生徒は、そんなことは高1の段階でも気付いていることでしょう。
『大学の数学』や『英文解釈教室』なんかを眺めながら「うわ、この参考書は難しいなぁ。でも、わかると面白いなぁ。」という経験をしているはず。
でも、"中堅"のみなさんは?
自分で参考書を選んで買った経験のある人、どれくらい居ますか?
学校で配られる以外の問題集を何冊自分で買って使っていますか?
そしてそれらをどれくらい使えていますか?
で、ここまで引っ張ってようやく「じゃぁ、あなたの塾って何をしてんの?」という話になります。
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