2012年2月6日月曜日

「覚えられない!」に対しての回答 その1

社会科の歴史の出来事や古文の助動詞の活用、物理では公式群、化学では無機・有機の物質の特性、それに英単語の用法などなど、中学・高校の学習では覚えるべきものが多々あります。
教育的には「丸暗記の勉強ほど役に立たないものはない」と思っていますんで、丸暗記でどうにかなるような試験を課すシステムにこそ問題があると思っていますが、まぁそれは今回は置いておいて。


シグマゼミでも、高校受験前の中3生が「年表がどうしても頭に入らない」と泣きそうになっていますが、覚えるためには何をどうすべきでしょう?

私の回答の1つ目は、「覚えることを減らす」コレに付きます。
とかく手当たり次第になんでもかんでも覚えようとする生徒がよく居ます。
ですが、<覚えるべきものがわかっていない>というか、<覚える対象を間違っている>というか、「覚えないといけないのはそこじゃァないだろ!」ということが往々にしてあるんですね。



<覚えるべきものがわかっていない>という一例ですが、数学で学ぶ直角三角形の性質に『三平方の定理』というのがあります。


 というやつですが、これをわざわざ斜辺がaの場合とbの場合とcの場合で「a2=・・・ ,b2=・・・ ,c2=・・・」なんて、3本覚えようなんて人は居ないはず。
「(斜辺)2=直角を挟む2辺の2乗の和」と覚えた方が簡潔ですし、本質的ですもんね。

さて、高校の数学Iの三角比という分野に『余弦定理』という『三平方の定理』を拡張したものが現れます。
上の三平方の定理のイメージと見比べると気付くかと思うんですが、この定理は「直角以外の角についても2辺と角の関係式から他の辺の長さを計算できる」というもの。
左辺の3項目に面倒そうな式がついていますが、形は大差無いですよね?

ところがコレを教科書では”どの角についても使える”ということからか 「a2=・・・ ,b2=・・・ ,c2=・・・」と3本並べて書いているんですね。
そのせいか、生徒は 「a2=・・・ ,b2=・・・ ,c2=・・・」と3本とも覚えようとする。
この定理、本当に大切なのはその用途なんですが、とにかく形だけ、しかも3本も(意味が無いのに)覚えようとするんですね。
ヒドイのは高校の授業の中でも「3本覚えろ」という指示が出ていたり、「余弦定理を3本書け」なんていう定期試験があったり。
「ぉぃぉぃ。もし、この3辺がp,q,rで与えられたらどうすんの?」と思うわけですが。


我々指導する立場の眼からすると、数学や理科の教科書のまとめ(囲み記事や太字のもの)には<覚えるべきもの>と<覚える必要のないもの>と<丸暗記するとかえって失敗するもの>があります。
ですが、習いたての生徒にはその区別なぞつくわけがありません。
そこで、その区別をしっかりつけ、「コレはこの形で覚えとけ」、「これは覚えたら失敗するから覚えなくていい」と指示することも我々の仕事の一つだったりするわけですが、どうも学校や塾の多くの授業では、なんでもかんでも「とにかく覚えろ」と言われるようで。


「そのまま丸暗記しろ」というのは、指示する側としては非常に簡潔ですが、学ぶ側からすると非常に効率が悪くなり、理解も進まなくなります。
「覚えることが多すぎる」と思ったのであれば、まずは<なんでもかんでも丸暗記>というのをやめ、<覚えることを減らす工夫>をしてみるのがいいかと思います。
多少の手間はかかっても、工夫をしているうちに 丸暗記では気付かなかったポイントが見え始め、理解が深まるということもおうおうにしてあるものです。

書かれたものをそのまま覚えるのはコンピューターの得意領域です。
しかし、人間の得意領域は「覚える」ことではなく「工夫できる」というところにこそあるのだと思うのです。

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とはいえ、その工夫の仕方がなかなか掴めないというのも事実でしょう。
うちの生徒さんにも、中高問わず「え?コレ覚えなくてもイイの?」と指導途中でよく言われます。
あなたもちょっとだけコツを探りに来てみませんか?

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